デジタル・フロンティアが目指すもの 長編フルCGの挑戦

デジタル・フロンティアが目指すもの -長編フルCGの挑戦- 1
毛利陽一監督  豊嶋勇作プロデューサー インタビュー

「フルCGアニメーションが躍進している」、そう感じる機会が増えている。これまではゲームムービーや映画やアニメーションの一部ということが多かったが、近年は、長編劇場映画などで全編フルCGという作品も少なくない。そして、新たな作品が送り出されるたびに、その映像技術に驚かされる。
そうしたなかでデジタル・フロンティアは、2002年の『ぼのぼの~クモモの木のこと~』をスタートに、早くからフルCG長編の制作を手がけている。『APPLE SEED』、『アタゴオルは猫の森』、『EX MACHINA-エクスマキナ-』、『biohazard DEGENERATION』といったヒット作、話題作に関わる。
現在は、この9月に公開された3D立体視フルCG『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』が公開され、さらに注目を浴びている。
フルCGアニメでは一体何が起きているのか、デジタル・フロンティアはその中で何を目指すのか。同社のCGプロデューサー豊嶋勇作氏、そして毛利陽一監督にお話を伺った。

デジタル・フロンティア http://www.dfx.co.jp/

(左)毛利監督、(右)豊嶋プロデューサー

豊嶋勇作 (CGプロデューサー)
1969年香川生まれ。大学卒業後(株)デジタル・フロンティアに入社。『ぼのぼの』(02)、『APPLESEED』(04)、「アタゴオル」(06)、『EX MACHINA』(07)、『biohazard DEGENERATION』(08)、にてフルCG映画のCGプロデューサーをつとめる。2005年『東京ゾンビ』で実写映画初プロデュース。その他、実写作品『デスノート』『GANTZ』、アニメ作品『サマーウォーズ』のCGパートに参加。2010年10月同社専務取締役に就任。現在に至る。

毛利陽一 (監督)
1970年生まれ。(株)デジタル・フロンティア所属。
2002年フルCGアニメーション『ぼのぼのクモモの木のこと』(クマガイコウキ監督)、2006年フルCGアニメーション『アタゴオルは猫の森』(西久保瑞穂監督)のCGディレクターを務める。また、TV-CM、ゲーム、アニメーションムービー作品を数多く担当。
『新鬼武者』『白騎士物語』『鉄拳5』『鉄拳6 BLOODLINE REBELLION』等のオープニングムービーを手掛ける。


■ 『鉄拳ブラッド・ベンジェンス』 CGのここが変わった

アニメ!アニメ!(以下AA)
デジタル・フロンティアさんは、CGの様々な分野で仕事をされています。いまは長編アニメーションの『鉄拳ブラッド・ベンジェンス』が話題になっています。さらにこれまでに『APPLESEED』、『EX MACHINA』、その後『バイオハザード ディジェネレーション』を制作されています。
観客として見ていても、技術がどんどん上がってきているのは肌で感じます。そのなかで『鉄拳ブラッド・ベンジェンス』が特に大きく変わったところはありますか?

毛利陽一監督(以下毛利) 
感じてもらえれば嬉しいのですが、顔の表情です。これまでのリアル系CGのキャラクターは、やはり冷たい印象があります。フェイシャルだったり、シーンの印象だったり、レイアウトだったり、いろいろな要素がありますが、それを払拭したい、感情が伝わるようなものにしたいと思っていました。
リアル系CGの場合は、造形の崩れを恐れて顔の表情は少し遠慮しがちになっていました。今回はなるべく動かし、血の通った感情移入出来るキャラクターを目指しました。たぶん今後は、それがさらに大事なことになってくると思います。
フルCGはビジュアルも派手で、表現力も実写と変わりません。『トランスフォーマー』のような、メカだって何でもできます。簡単にはできませんけどね(笑)。ただ、生身を表現するのは、まだ苦手意識があります。その辺をもう少し改革していけば、フルCG作品はもう少し広がっていける気がします。

AA
今回の映像で、キャラクターの顔の陰が多くなったという印象がありました。

毛利
いわゆる美人にするために、よく顔を飛ばすというのがあります。白く明るい方が美人に見えたり、かっこよくも見えるんです。けれども、それは情報量を消していることになります。頬の動きとかでは、ちょっとした陰が乗っていることで動いているように見えます。
顔がこう動いているんだという情報を、飛ばさないようにしています。そういう意味で、比較的陰が多く見えているのかもしれないですね。  

豊嶋勇作プロデューサー(以下豊嶋)  
フェイシャルキャプチャを使ったフェイシャル技術が上がったんだと思います。『バイオハザード』の時は使用することが未確定のままアクターのフェイシャルキャプチャをしました。それをうちのフェイシャルの仕組みで利用できる構造が完成し、途中で使用する方向に切り替えました。キーフレームでやるフェイシャルに比べるとかなり早く出来てスケジュールが滑り込めたというのがありました。それで「フェイシャルキャプチャはやっぱりよかったね」という話が、その当時からあったんです。
そういう意味では、フェイシャルに力を入れて成功したのは、『バイオハザード』からのステップアップなんだろうという気がします。

AA
もうひとつ映画の話をさせてください。やはり印象深いのはアクションシーンです。当然、モーションキャプチャを使われていると思うのですが、かなりスピードが速いですよね。あれはモーションキャプチャのデータを相当加工されるものなのですか?

毛利 
もしかしたら全部を早送りしていると思われているかもしれないですね。けれども意外とそんなには早送りはしてないんです。スピードに緩急をつけているくらいですよ。
アニメーションだってありますよね。速いところを作ってあげた替りに、当たったところの尺は実際より少し長く延ばすとか。そういうことをやっています。
今までアニメーションを詰める時は、日本のアニメを意識するので、ためや詰めをかなりやっていました。動く時は動くけれども、動かないときはなるべく動かない感じを、CGでも結構やったりしていました。
けれども今回のキャラクターのテイストでは、逆になるべくモーションのデータの情報量を削るのはやめようと思っていました。生のデータを極力活かすようにしています。ただカット尺も結構短いので、それで動きも速い印象に映るのかなという気がします。

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