カート・ハスラー氏に聞く YenPressのマーケット戦略

YenPress カート・ハスラー氏に聴く 米国マンガの現況 3 
[YenPressのマーケット戦略]

YenPress カート・ハスラー氏 インタビュー


[YenPressのマーケット戦略]

アニメ!アニメ!(以下AA)
Yen Pressのターゲット読者層は、VIZ Mediaや講談社 USAよりももっとコアなファンに向けているように思います。

カート・ハスラー氏(以下K・H)
ある特定のカテゴリーを作ろうと思ってライセンスを取るわけではありません。むしろ、この本の読者はいるのだろうかと考えます。
もちろん、いくつかの作品はコアなファン向け、オタク向けですが、特にコアなファンにターゲットを絞っているということはありません。

AA
Yen Pressの読者には、少年や少女よりも年齢の高い人たちもいるのでしょか?

K・H
大人向けの作品で成功した作品もあります。ただ、青年向けや女性向け作品はもっと人気になって欲しいと思っています。『乙嫁物語』なども出しますし、これは是非成功させたいですね。
実際には、マンガが実質的にアメリカで紹介されるようになってからまだ10年しか経っていないのです。読者の年齢が上がるのは待たなければなりません。

AA
米国での大人向けの作品の市場の開拓は可能ですか?

K・H
難しいのは確かです。ただ、マンガが人気になる前には、女性向けに作られたコミックスはなかったわけです。誰も女性はコミックスを読むとは思っていませんでした。一方日本では女性がマンガを読み、本屋のマンガコーナーに普通に足を向けています。
大人の読者が育つには、いまの10代の少女たちが大人になってマンガを読むのを待つ必要があります。それは既にゆっくりと動き出していると思います。
ただ、男性の大人向け作品はまた少し状況が違います。そこにはすでにアメリカンコミックスがあるからです。コミックスファンほどマンガを嫌いな人はいないですから。コミックスの若い読者が大人になったからと言ってマンガを読むわけではありません。

AA
手塚治虫や辰巳ヨシヒロの『劇画漂流』などの作品をどう思いますか?

K・H
個人的には大好きですね。ただ売れ方という点では、ベストセラーというわけではなく、他のマンガと読者層が違います。これらの作品は高い年齢層向けの作品で、コミックスを卒業した人が読んでいる場合もあります。ああした作品が健闘しているのは嬉しいし、その読者がこれらの作品に向けた愛情を、これからも持ち続けて欲しいと願っています。

AA
Yen Pressは日本のマンガのほかに自社で制作するオリジナルマンガも数多く出版していますが、これはどうしてですか?

K・H
楽しいからというのが大きいですね。アーティストと一緒に働くのは、やりがいのある仕事です。
それに加えて、自分たちでアメリカの読者に向けた作品を得られることもあります。アメリカにはたくさんのマンガファンがいますが、同時にマンガのことを知らない子供たちもたくさんいます。
例えば、世界中でベストセラーを生み出したジェームス・パターソンの『マキシマム・ライド(Maximum Ride)』をオリジナルのマンガ作品にしました。熱心なファンを持っている作家の作品をマンガにすれば、マンガを知らない人にも日本マンガを紹介することが出来ます。

AA
Yen Pressにとってオリジナルマンガのほうが、収益が大きいというのはありますか。

K・H
必ずしもそうではないですね。実際に業界全体ではOEL(Original English Language manga)と呼ばれた作品はありましたが、編集に苦労した作品も多いはずです。質の高い作品がなければ、成功はありません。

AA
例えばYen Pressが『トワイライト』マンガの出版を発表した時、多くの人がかなり成功が約束されたビジネスだと思ったようです。

K・H
それは事実ではないですね。ファンを満足させない本を作ったら大変なことになります。本を作るには時間がかかります。
私たちは、消費者を理解し、プロパティを理解し、作者そしてファンにも受け入れられるマンガ家を探す必要があります。それがとても大事なのです。そして、それは一般に考えられているよりも大変なことです。でも最終的にはそれが報われはずです。

AA
Yen Pressは日本の会社とどのような連携を取っているのですか?例えばスクエア・エニックスとは、他の出版社よりも緊密な連携を持っているようにも見えますが。

K・H
Yen Pressにとってスクエア・エニックスは他の日本の出版社とあまり変わりはありません。特別な関係であればいいとは思いますが、そうではないと思っています。たまたま幸運なことにスクエア・エニックスとは良い関係を保ってきたのです。Yen Pressは現在10社ほどのライセンサーと取引を持っています。
電子出版に関しては、日本のいろいろな会社と話を始めたところですが、まだ詳しく話すことは出来ない段階です。

AA
日本の出版社との関係では、昨年の日米出版社のスキャンレーションへの警告に関する共同声明発表では、あなたが大きな役割を果たしたと聞いています。

K・H
そうですね。私は共同声明を実現するために積極的に働きかけてきました。その協力体制は今でも続いています。

AA
今後も動きはあるのですか?

K・H
その通りです。しかしいろいろな法的問題を整理し、必要な行動を取るのに時間がかかっています。これは業界全体に必要なことで、重要なことです。ひとつの出版社だけが動いてもどうにもなりません。業界全体で対処しなければいけません。
あの声明後に日米出版社の協力体制は終わったかのように思われていますが、現在は表立って動いていないだけです。近い将来、新たな動きがあるはずです。

AA
本日はありがとうございました。