YenPress カート・ハスラー氏に聞く 米国マンガの現況 1

YenPress カート・ハスラー氏に聞く 米国マンガの現況 1 
米国のマンガ市場が抱える問題とは?

YenPress カート・ハスラー氏 インタビュー


米国第2位のマンガ出版社YenPressのパブリッシャー・デイレクター カート・ハスラー氏にYenPressの戦略や米国のマンガ市場に伺った。話はYenPress以前、マンガブームの始まるボーダーズ時代、YenPressのビジネス、そして電子書籍、違法アップロードなどに及んだ。

カート・ハスラー (Kurt Hassler)
米国のマンガ出版YenPressのパブリッシャー・デイレクター。YenPressはフランス最大の出版社の米国法人アシェット・ブック・グループが2006年にマンガ出版事業部門として立ち上げた。ハスラー氏はその事業立ち上げに関わり、現在まで統括をしている。
マンガのビジネスに関わるきっかけは、大手書籍チェーンであるボーダーズのグラフィックスノベル部門の購買担当となったことである。ボーダーズでは書店にマンガを積極的に導入し、米国で2000年前後から始まったマンガブームに貢献した。2006年にポップカルチャー業界誌ICv2が行った調査「米国マンガ業界で最も影響力のある人物」の第1位に選ばれている。

YenPress
米国のマンガ出版社。2006年にアシェット・ブック・グループの事業として、カート・ハスラー氏らが立ち上げた。『黒執事』や『ソウル・イーター』などのヒット作、『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』なども手掛ける。立ち上げから4年で米国マンガ市場では、VIZ Mediaに次ぐ第2位に成長している。
また、日本マンガの翻訳出版のほか、韓国マンガの出版、米国の小説を原作としたオリジナルのマンガ『マキマムライド』、『トワイライト』などの制作も行っている。
YenPressサイト(英語) http://www.yenpress.com/


■ [米国のマンガビジネス成長期]

アニメ!アニメ!(以下AA)
カート・ハスラーさんは、米国のマンガ業界で重要な人物として知られています。なぜ、マンガ出版の世界に入ったのか教えていただけますか?大手書籍チェーンのボーダーズの購買担当として成功を収めたのが最初だと思います。

カート・ハスラー氏(以下K・H)
もともとアニメやマンガのファンでした。1990年頃にニューヨークで上映された『AKIRA』を観たのが最初です。それからアニメを観たり、マンガを読んだりするようになりました。アメリカのコミックスも好きでずっと読んでいましたね。

K・H
ボーダーズで働き始めた当初からグラフィック・ノベル部門のバイヤーになりたいと思っていました。ちょうどTOKYOPOPがマンガ出版を始めた頃にそのポジションに着きました。VIZ(ビズメディア)がアメリカでマンガ出版をしてしばらく経ち、ダークホースも既に日本のマンガを何作か出していました。ただ、書店がマンガを扱う量はそれほど多くなかったんです。
そこでバイヤーとしてボーダーズグループのウォルデンブックス(Waldenbooks)のためにマンガの仕入れを始めました。ウォルデンブックスは基本的にモールにある書店ですが、当時はマンガを扱っていませんでした。
TOKYOPOPが出版していた『セーラームーン』をウォルデンブックスに置いたところ、これが大成功しました。その後からマンガ部門は大きくなって行きました。これが2001年以前の話です。

AA
当時マンガを一般書店に置くことに抵抗はなかったのですか?

K・H
私がウォルデンブックスのグラフィック・ノベル部門を引き継いだ当時、マンガはどの店舗も10冊ほどしか置いていませんでした。やはり抵抗はありましたし、書店員には慣れ親しんで貰う必要もありました。
実際に最初にマンガを書店に送った時は、そのほとんどが送り返されてしまいました。でも、売上げが伸びていくうちに抵抗はなくなって行きました。
私がボーダーズを離れる2006年頃には、マンガはSFやファンタジーを越え、ボーダーズで最も大きな部門のひとつとなっていました。これは当時の話で、いまはまた状況は変わっています。

AA
なぜそこまでマンガを置くことにこだわったのですか?

K・H
新しい分野だからこそ、潜在的な読者がいるはずだと思っていました。実際にそこに読者がいるのもわかっていたのです。当時はアニメの放送も多かったですし、何より自分自身がファンだったというのは大きかったですね。

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