ヨーロッパ市場での日本アニメ

 週刊エコノミスト1月11日号は、JETROヨーロッパの豊永真美氏による『日本製アニメ 欧州での実力度』と題したレポートを掲載している。1ページだけの短いものであるが、ヨーロッパ市場での日本アニメの現状が手際よくまとめられており参考になる。

 記事の内容は、フランスにおける宮崎アニメの人気やポケモン以後の日本映画の劇場観客数の伸び、ヨーロッパにおける日本にテレビ番組の放映時間などから日本アニメのヨーロッパへの浸透度を紹介している。また、フランスの漫画市場(BD)における日本のコミックの割合が14%になっているとした興味深い内容もある。
 また、ヨーロッパでは日本や米国で行なわれているメディアミックスがうまくいってないとしている。さらに、80年代のフランスで起きた日本アニメの排斥行動をひき、ビジネスの成功のためには文化の理解が重要だと述べている。記事は、これまでのディマンド・プルのビジネスでなく、日本企業の戦略的な市場拡大が必要だと締めくくられている。

 近年、輸出産業としてのアニメが語られる時に話題になるのは、ほとんどが米国市場であった。これはいうまでもなく、米国のアニメーション市場が世界最大の市場であるからだ。当然、ビジネスチャンスもそこにあると考えられている。また、将来の可能性のある市場としては、中国市場が語られることが多い。
 しかし、市場の規模で考えればヨーロッパ市場はEUだけでも、人口4億6千万人である。米国の2億8千万人を遥かに上回る。日本アニメが広く普及していると考えられるフランス、ドイツ、イタリア、スペインだけでも2億5千万人の市場である。さらに、これらの国々では、1980年代から広く日本アニメが放映されてきた。ヒットしたとは言われながらいまだ日本アニメがマイナー文化の領域に属する米国市場に較べると、大衆市場への広がりも期待出来る。にもかかわらず、これまでヨーロッパ市場は重要な市場とあまり言及されてこなかったのは言語の問題が大きかったためであろう。上記の記事の中で豊永氏は次のように述べている。

“国によって言語が分かれる欧州では、コンテンツ市場は基本的には言語別に市場がセグメントされている事情を日本側が十分に認知してない場合も多い。” 

 ヨーロッパは主要な市場だけでも、英語、仏語、独語、イタリア語、スペイン語と5つもあるから、アニメを放映するにあたり翻訳の手間や、パッケージなどの作業も5倍必要になり、各国ごとの交渉も必要になる。そうした、煩雑な作業がヨーロッパ市場における戦略的な市場開拓の妨げになってきたと考えられる。
 しかし、記事の中で触れられてように、日本アニメに対して追い風が吹いている現在は、日本企業が戦略的に市場開拓を進める好機である。そして、ヨーロッパは、手間がかかるからといって見過ごすには大き過ぎる市場でもある。