コンテンツ海外展開新会社設立 官民ファンド60億円出資

 8月14日付けの日本経済新聞によれば、官民出資の投資会社産業革新機構は10月をめどに全額出資の海外向けコンテンツ企画開発会社オール・ニッポン・エンターテイメント・ワークスを設立する。
 同社は日本のマンガや小説などの映画化権を買い取り、米国の映画会社と共同で映画開発を進めるとしている。また、新会社には国内のコンテンツ・メディア関連企業も参加する。日本経済新聞では、パートナー企業として日活、タカラトミー、東宝東和、TBS、フジテレビの名前を挙げている。

 産業革新機構は、2009年7月に「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」により設立された国策投資ファンド会社である。日本の新しい技術、ベンチャー企業、企業の海外展開を振興、支援する。
 政府が920億円を出資、民間が約100億円を出資、さらに政府保証による8000億円の資金調達枠を持つ。最大で9000億円の出資が可能となっている。これまでに東芝と共同で海外のスマートメーター大手企業を買収したほか、全日空が主導して設立する格安航空会社の出資、知財ファンドLSIPへの投資なども行っている。

 国が関与するコンテンツファンドの必要性は、かねてより知的財産戦略本部の議論の中で言及されてきた。今年6月に取りまとめられた知的財産推進計画2011においても、短期的にとるべき施策として、国内コンテンツを核にした海外事業展開に資金供給するファンド立ち上げが盛り込まれている。
 知的財産戦略本部の議論では、当初のコンテンツ製作における単純な投資でなく、企画に対する支援、海外流通の確保が指摘されていた。今回の産業革新機構の新会社には、そうした考えが反映されている。
 また、先に公表された産業構造審議会情報経済分科会の中間とりまとめ「「融合新産業」の創出に向けて」でもこのファンドに言及されている。そこでは「コンテンツ海外展開ファンド(仮称)」の役割を、投資案件のグローバル展開サポートとする。さらに投資案件のイメージとして、マンガ・小説などの海外市場向け企画開発、権利を集約したうえで企画開発段階からグローバル流通網を持つハリウッドなどのプレイヤーと共にする事業展開を挙げている。

 産業革新機構による新会社の設立は、これまで他国に比べて弱いとされてきた日本コンテンツの海外展開バックアップを強化するものとなりそうだ。今後の展開とその成果が注視される。
 一方で、国とコンテンツファンドの結びつきは、2000年代初頭から半ばにかけてのコンテンツファンド支援とその挫折を思い出す人も少なくないだろう。2004年の改正信託業法で誕生したジャパン・デジタル・コンテンツ信託、ライツ信託の事業運営が行き詰まり、コンテンツファンドを中心に新しいファイナンス手法を駆使したGDH(現ゴンゾ)の経営は大きく傷ついた。コンテンツファイナンスに力をいれたみずほ銀行もコンテンツへの出資は停止する。新型のコンテンツファイナンスを提案したシンクはこの4月に解散を選択した。
 今回のファンドはこうした経験を得たうえで、企画段階からの関与、既存のコンテンツ企業とのパートナーシップの構築、専門家によるサポートを組み込んだと言っていいだろう。また、目的を海外展開に絞ったことが従来と大きく異なる。
 国内の優良事業案件には資金は集まり易く、コンテンツファンドにはリスクの高い案件が集中したことが、かつてのコンテンツファンド挫折の大きな理由と考えられている。今回は、むしろ日本の多くの企業がパートナーシップやノウハウを持たないがゆえに踏み込みにくい海外事業でサポートする新たな視点が持たされている。

産業革新機構 http://www.incj.co.jp/