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特殊映像ラボラトリー 第25回 「『イヴの時間』に、何が起こったか?」前編

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
特殊映像ラボラトリー 第25回 「『イヴの時間』に、何が起こったか?」

斉藤 守彦
[筆者の紹介]

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

 一度こういう取材をやってみたかった。
我々ジャーナリストやライターたちが、映画について関係者に取材し、原稿を執筆・掲載されるタイミングは、大半の場合、映画の公開前に限られる。
 書き手としては、取材行為は「報道」、取材対象たる作品関係者は「宣伝」という認識の差こそあれ、そこでは多くの場合、特定の作品についてのエピソードや抱負、展望などが語られる。
 だがしかし、あくまでそれは作品公開前の時点での認識に基づいたものであり、いざ作品が公開され、興行成績や入場者数、パッケージ・メディアの売れ行きなどの「結果」が出た段階で、それらの成果や作品の反響について語られた記事は、ほとんど見あたらない
 ならばそれをやってみよう。
 その対象として「イヴの時間」を選んだのは、何よりも筆者がこの作品を、こよなく愛しているからだ。そうでなければ、作品の“その後”を追いかけようという気にはなれないし、ならない。
 当初は「『イヴの時間』総括」と題して、配信から劇場版公開、パッケージ・メディア、関連商品などのビジネス展開を、文字通り総括しようと試み、長江努プロデューサーに取材を申し込むも、「現在まだパッケージ・メディアが稼働中で、今後レンタルなどの展開もあるので“総括”は出来ない」との返事。ならば「配信と劇場版の興行を中心に語ってください」と改めて依頼し、取材が実現した。また「イヴの時間」スタッフを代表して吉浦康裕監督に、配信時や劇場版の制作を通じて感じたことやエピソードなどを語っていただいた。

■ 原則無料の、ウェブ配信という手段で世に出すことを決めた理由。

−最初にうかがいたいのは、「イヴの時間」を世に出すに当たって、ウェブ配信という方法を用いた、その理由です。6本の短編を連作という形で製作する。このスタイルも、ウェブ配信を意識してのことでしょうか?
長江努プロデューサー
「吉浦監督の前作『ベイル・コクーン』が完成した2005年の時点では、メディアの選択肢はDVDしかありませんでした。今回は初めてのグループワークになるとはいえ、それなりの作業量が監督にかかってきます。そうした状況を踏まえ、出した結論が15分サイズでシリーズもの。なぜ15分かというと、そのくらいの尺であればネット配信が可能なレベルになったのと、15分が6本集まれば90分尺になるので、あわよくば劇場公開も狙えるかも・・・という理由でした。

−とはいえウェブ配信そのものは、原則的に課金が発生しませんよね。そのあたりはリクープを達成する上で、どのように位置づけたのでしょうか?
長江P
コマーシャル的な部分で『ベイル・コクーン』に足りなかったのは、監督や作品の知名度の広がりでした。リリースの直後から、コアなアニメ・ファンは反応してくれたんです。東京アニメフェアやコミケでブースを出してDVDの即売会をやったりすると、気がついてくれた人々の行列が出来るという状況が1年ほど続きました。なので、知ってもらいさえすれば、そこそこ動くという実感はありました。でも、その「知ってもらう」ということが一番難しかったんです。

−いわゆる「認知度」を高める必要があったわけですね?
長江P
大手のメディア、アニメ雑誌やテレビとかが取りあげてくれる規模のものではないし。どうすればもっと幅広い層に気づいてもらえるか?そこで選んだのがネットでの無料配信です。タダだと気軽に見てもらえるし、クチコミで認知度が広がることも期待できます。とは言え、全部タダで見られて、商品価値が目減りしないのか?ということも考えました。でも吉浦監督の映像が持つ高品質は、ネットで100%再現するのは不可能だという確信もありました。オリジナルの映像が持つ、その世界の中に引き込まれるような感覚は、とうていネットでは伝わらない。なので、まずはお話の面白さや魅力的な世界観をネットで知ってもらう。その上でもっとどっぷり浸りたいというファンにパッケージを買ってもらう。あの世界を手元に置いておきたいというマスは絶対に存在する、と信じて決断しました。

−「イヴの時間」のウェブ配信におけるパブリシティは、どのように行われましたか?
長江P
配信が始まった当初は、ボクがプロデュースするデジスタで知り合った真狩さんとか、個人作家に造詣の深いジャーナリストの方々に取材していただきました。「アニメ!アニメ!」さんにも載りました(笑)。でも、それだけだと期待するほどの広がりにはならない。

■ ウェブ配信によるリアクションは、制作現場を大いに活性化にさせた。に続く

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