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特殊映像ラボラトリー 第23回 「七瀬ふたたび」のための、小中和哉監督の戦い

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
特殊映像ラボラトリー 第23回  「七瀬ふたたび」のための、小中和哉監督の戦い

斉藤 守彦
[筆者の紹介]

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

 小中和哉監督が、長いこと“あるSFファンタジー”のシナリオを映画化すべく奔走している、という話を聞いたのは、小中監督の「ミラーマンREFLEX」が劇場公開され、DVDがリリースされた、2006年の春頃だったと記憶している。そのことを筆者に耳打ちしてくれたのは、小中監督の実兄である脚本家・小中千昭氏であった。しかもその映画のシナリオは、平成「ガメラ」3部作や「機動警察パトレイバー」シリーズなどの伊藤和典氏が書かれたものだという。「どんな作品なんですか?」と、小中監督へメールで聞いたところ、それが筒井康隆氏の「七瀬ふたたび」であることが判明。これには驚いた!!

 筒井康隆+小中和哉+伊藤和典!!! しかも題材は「七瀬」!!!

 このコラボレーションに燃えるものを感じた筆者としては、一日も早い実現を望んだが、小中版「七瀬」は、なかなか始動しなかった。出資関係の問題が解決し、クランクインするまでに、さらに2年以上を要することとなり、伊藤氏が初稿を完成させてから、実に10年もの月日が流れていた。2009年9月、監督のご厚意で、いち早く完成した「七瀬ふたたび」を拝見することが出来た。これまで映像化された「七瀬」とはまったく異なるルックに多少の戸惑いを覚えたものの、原作に忠実でありながら、大胆なラストの変更には、驚くばかりだった。公開が2010年秋と決定し、7月に行われた試写会で再見し、さらに原作を数年ぶりに読み返した上で、小中監督にインタヴューを申し込んだ。
 
■ 次回作のキーワードは、
「ティガ・ダイナ&ガイア」に込められていた!!

−そもそも「七瀬ふたたび」を映画化しようと言い出したのは、どなたなのでしょうか?
小中 プロデューサーである、小椋事務所の小椋悟さんです。

−小椋さんが、小中監督と伊藤和典さんに声を掛けたのはいつ頃のことですか?
小中 時代で言うと、1997年ぐらいかな…「ウルトラマンガイア」の前後あたり。「ガメラ3/邪神覚醒」公開の頃(1999年3月)には、初稿の直しをやっていました。だから初稿が上がったのは98年ぐらいかな?「ガメラ3」の撮影中に書いていたのだと思います。僕が同じ時期に、「ウルトラマンティガ・ダイナ&ガイア/超時空の大決戦」をやっていて、そのヒロインの少女の名前が「七瀬」って言うんです。というのは、次は「七瀬」をやるという、隠しキーワードを既に入れてたんですよ。

−それで「七瀬」なんだ!?
小中 まあ時空を飛んで行くという設定もあって、それで「七瀬」という苗字にしたんです(フルネーム=「七瀬リサ」)。

−では伊藤さんの初稿が上がって、すぐに映画化出来ると判断されたんですか?
小中 小椋さんも「面白い、作る」と判断したと思いますよ。ただ、出資を仰ぐために色々な企業へシナリオを持っていくと、分かりにくいだなんだと言われるわけですよ。

−みんな好きなことを言いますからね。
小中 で、やっぱりそうかなあ…と揺れ続けて。僕は伊藤さんのシナリオが決まったら、すぐに撮るつもりだった。だけど「ホンが分かりづらい」と色々な人から言われたんです。色んな時勢が交錯する話だし、読み物としてもシナリオを読み慣れている人じゃないと、確かに分かりづらい。「映像にすれば分かりやすくなります」とは言ってきたんですが。ト書きは極力、これは過去ですとかイメージですとか、読む人のために僕が書き足したり。何とか分かりやすいホンにして、色んなとこへ出資を持ちかけたんですが…。

−そういうものなんでしょうかねえ…。

■ 「原作に忠実に」。
   されどオリジナルのキャラ、驚愕のラストシーン…。

小中 小椋さんもそういう意見を取り入れようとして、それで猪爪慎一クンが多少直して、その後村井さだゆきさんがさらに手を加えて、彼が狩谷の過去とか突っ込んできたんです。

−七瀬たち能力者と敵対する狩谷(吉田栄作)は、原作には登場しませんが?
小中 そうですね。狩谷のキャラを作ったのは伊藤さんです。でも彼の内面世界に、そこまで深く立ち入る予定はありませんでした。これは僕の趣味でもあるんですが、敵もただの敵じゃなくて、悩める人間的な部分を見せたかった。それを説明的ではなく、凝縮した形で。彼の持つ能力の説明も含めて、七瀬が彼のもともとの能力を引き出すというロジックとか、そのへんは村井さんの仕事です。

−なるほど。
小中 今回映画化が決まって、もう一回伊藤さんにシナリオを戻したら「オレ、こんなホン書いたかなあ?」って(笑)。でも猪爪クンや村井さんが書いた箇所でも、伊藤さんが「これは良いだろう」と認めたところは残して、それが今回の映画の決定稿です。

−映画を見て、あのラストには驚きました。
小中 実は映画のラストも、伊藤さんの書かれた初稿では、違っていました。ただその設定は、さすがに分かりづらい。それも原作とは違うんですが。ですからラストが現在の形になったのは、第2稿からです。リセット感があってポジティヴなエンディングにしたいというのがありました。小椋さんもそれは認めてくれたんですが、出資者の間では、賛否両論。

−つまり、そういったやりとりがシナリオの段階で、この10年間何度もあったわけですね。
小中 最初僕は、多岐川裕美主演のNHK版「七瀬ふたたび」を見ていました。あの終わり方は、当時インパクトがあったし、そのやるせない感じが、ある種心地よかった。でもあれは70年代の良さであり、今の映画として、お客さんに伝えるメッセージとしてやるのは違う。そこを伊藤さんと真っ先に悩んだんですよ。そうしたら、原作のロジックを伊藤さんがうまく応用してくれました。今回の映画が、あのラストを迎える可能性というのは、実は原作にも書かれてるんですよ。そこに目をつけたのは、さすが伊藤さんのSF者としての底力だと。それをちょっといじることで、ポジティヴな意味合いに変わるわけです。

−原作の後半だけにフォーカスして物語を進めるというのも、伊藤さんのアイディアですか?
小中 そうです。映画を2時間以内にするには、それが正解だろうし。それによってバトルムービー的な特性が出て、冒頭から戦いが始まっている。戦いの後半だけをチョイスして、前半のメンバー集めはエッセンスだけ。でもキャラクター同士の感情みたいなものは明確にしていく。そこはやりたかった。

■ スタジオジブリ・鈴木プロデューサーにもアプローチ
       紆余曲折の末、バンダイビジュアルの出資が決定。

−シナリオは、全部で何稿まで行かれたんですか?
小中 10稿以上は行ってますね。印刷しただけでも3,4種あります。

−とにかくあらゆる会社を、出資のために回られたのですね
小中 僕自身もスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに「実写やりませんか?」ってアプローチしたら「オレはやんないけど、日テレや、東宝の映画調整部の人を紹介するよ」と言ってくれました。

−東宝の映画調整部では、何と?
小中 「Jホラーみたいに、売れてないジャンルが売れてしまう例もあるけど、一番手にはなりたくない」と、正直に言われました(笑)。

−また、持って回った言い方しますねえ(笑)。
小中 まあでも、シナリオを読んで感想を言ってくれるだけマシですよ。

−最終的にバンダイビジュアルが出資しましょうと。
小中 当時バンダイビジュアルに在籍されていた久保聡さんとはつきあいが長いから、僕が「七瀬」をやっていることを、彼は知っていたんです。当初は「七瀬? ちょっと違うな」と言ってました。原作のキャラクター・イメージがあったみたいですが、シナリオを読んだらころっと変わって「面白い」と。久保さんとは以前、「ブラックジャック」を一緒にやっています。この作品の制作プロダクションが小椋事務所で僕が監督、久保さんはプロデューサーだった。この3人のチームでもう一回やろうと。それでバンダイビジュアルが手を挙げてくれて、製作委員会を組めることになった。このバジェットだったら、今、ビッグネームの俳優さんではなく、これから出てくる人をキャスティングしようと、現実的にチョイスしていったら、芦名星になったんです。

2に続く 初代七瀬=多岐川裕美を想起させる、芦名星の“ハードボイルド七瀬”

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