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特殊映像ラボラトリー第29回 「春休みファミリー映画戦線異状アリ?」 

斉藤 守彦の特殊映像ラボラトリー第29回 「春休みファミリー映画戦線異状アリ?」 

斉藤 守彦
[筆者の紹介]

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。


■ 群雄割拠!!「ドラえもん」VS「ONE PIECE」VS「プリキュア」VS「忍たま乱太郎」…。

 今年春休みの映画興行は、なかなか面白そうだ。例年確実にヒットを記録するファミリー・ターゲットのアニメ番組が、この春はまさに群雄割拠。映画版スタートから30周年を迎える「ドラえもん」の新作「新・のび太と鉄人兵団 –はばたけ天使たち−」、東映の「映画プリキュアオールスターズDX3/未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」と、ワーナーのローカル・プロダクション作品「劇場版アニメ忍たま乱太郎/忍術学園全員出動!の巻」。そして興収48億円を記録した「STRONG WORLD」に続く「ONE PIECE」シリーズの最新作「ONE PIECE 3D/麦わらチェイス」は「トリコ3D/開幕!グルメアドベンチャー!!」の2本立てで、3D映画として登場。外国映画では、ディズニーの3Dアニメ「塔の上のラプンツェル」も公開される。ファミリー・ターゲットのアニメ映画及び、本来はファミリー映画となるべき作品たちの、このラインアップ。とりわけ日本映画のそれは、近年にない強力な布陣だ。「ドラえもん」「ONE PIECE」「プリキュア」の3大シリーズが同時期に顔を揃えるのは、初めてのことである。
 そこで今回の「特殊映像ラボラトリー」では、これら春休みファミリー映画たちが、いかなる興行を展開するか、過去のデータや作品内容からそれらを予測するという、無謀な試みに挑戦する。

■ 春休みファミリー映画マーケットの市場規模は?

 まずは我が国に於ける春休みファミリー映画マーケットの、市場規模を過去のデータから見てみよう。


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 ご覧のように、ここ5年間の春休みファミリー映画は、「ドラえもん」「ケロロ軍曹」「ONE PIECE」の3シリーズを中心に推移しており、2009年からは「ONE PIECE」シリーズが外れ、「プリキュアオールスターズDX」シリーズがこれに替わる形となる。今世紀初頭の時点では、この市場構成が「ドラえもん」と「東映アニメフェア」の“2強”が、シェアを分け合っていた。これに外国映画を含む競合作品が加わり、各年70〜100億円前後のマーケットを形成。「ドラえもん」シリーズは、そうした春休みファミリー映画の中で、ほぼ30%前後のシェアを獲得しているが、同時期に「モンスターズ・インク」など強力な競合作が出た場合、17%程度にシェアが減少した例もある。

■ 「シリーズ最高傑作!!」との声もある「新・のび太と鉄人兵団」

 この100億円マーケットの中で、それぞれの作品がいかなる戦いを繰り広げるか。実際に作品を鑑賞した上で比較をしたいのだが、残念ながら締め切りまでに試写を見られたのは「ドラえもん」のみ。ただし、この「ドラえもん/新・のび太と鉄人兵団」の出来が、すこぶるよろしい。ハードSF的な世界観を、お馴染みのキャラクターで楽しく見せ、なおかつ最後には感動の涙を流させるという内容に、筆者も大いに満足。「シリーズ最高傑作!!」との声も多いという。作品として、クォリティが高いことは素晴らしいことだが、さてファミリー映画である「ドラえもん」シリーズの新作を、映画評論家や映画ライターたちの誉め言葉が、「新・のび太と鉄人兵団」の興行ポテンシャルを上げるかといえば、疑問が残る。「ドラえもん」シリーズのコア・ターゲットである子供たちの鑑賞動機に、レビューが影響を与えるとは思えないからだ。
 では「ドラえもん」シリーズの観客層はどうなっているか。東宝が新作の初日に行っている観客アンケートによると、昨年の「のび太の人魚大海戦」の観客の年齢層は、0〜5歳が14.30%、6〜9歳30.50%で計44.80%。親の層にあたる大人は30歳代15.40%、40歳代15.10%、計30.50%と30パーセントを超えている。

 製作サイドとしては、「ドラえもん」シリーズの顧客対象は、第一に未就学児童から小学生にかけての子供たち。次にその親と定義していることだろう。リニューアル後の「ドラえもん」シリーズを見ると、子供たちより親に対して“感動”をアプローチすることが以前より強まっているように思えるが、それが事実でも、子供たちの変わらぬ支持を得ているあたりが「ドラえもん」シリーズの強さの秘密だと言えよう。
 ひとつ、面白いエピソードを耳にした。去年神保町シアターで「ドラえもん」シリーズ全作品の上映を行ったところ、連日大盛況となった。ところが観客の中心となった年齢層は、20〜30歳代の男女で、ファミリーの姿は、ほとんど見られなかったそうである。「ドラえもん」シリーズを見て育ち、まだ親になっていない層が「新・のび太と鉄人兵団」のクォリティに関する話題に反応し、映画館に来れば、今年の「ドラえもん」の興行は例年以上に盛り上がることだろう。ここ数年の興収の上限約35億円を上回る可能性も充分にあると筆者は見ている。

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